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実はドキュメンタリー漫画が適正?本宮ひろ志の「実録たかされ」 [名作紹介]

本宮ひろ志といえば、ジャンプの実力(アンケート至上)主義の中で一番最初に頭角を現した作家だ。と言っても自分がジャンプを読みだした頃は、扱いはでかいが掲載順は後ろの方という、浮いた巨匠のイメージだった。このブログでは何度も引用している「赤龍王」終了後は主戦場を青年誌に移し、ヒットを重ねたようだがそれらを読んでも当時の自分には心に響かなかった。
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(人間の顔には全く表情をつけない自然の顔がある。顔の筋肉を使わないニュートラルな地の顔だ。地の顔が笑い顔ならそれだけで得な生き方をする。怒りの顔、泣き顔お、アホ顔。この時の江川の顔は泣き怒り顔だ。決して他人から好かれる顔ではない‥。)

粗暴なオッサンの好む作家というイメージはあまり間違っていない気がする。それがサラリーマン金太郎ではこの作家の世界観に、ある程度リアリティが増した気がして新鮮だった。サラリーマン金太郎は単行本を揃えていたのだが、引越しの際の整理で処分してしまい、そのうち買い直そうと思っている。
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(子供の野球言うのはね。昔から警察署なんかの主催であったんです。だから高校野球も青少年教育というのが中心にあって厳しいのは当たり前なんです。厳しく鍛えられた野球に人は興味をもってくれる。お客さんは見に来てくれる。私も全部認めるわけじゃないが高校野球は違うんです。)

数ある本宮作品の中でうちにあるものは3作品。前述の「赤龍王」。やはりブログで紹介したことのある「やぶれかぶれ」。そして最後の1作が今回紹介する「実録たかされ」だ。「たかされ」とは「たかが」「されど」という意味だそう。この漫画は元巨人のピッチャー江川卓の半生を追ったドキュメンタリーである。最初は実話を元にしたストーリー漫画だったのだがあまり面白くなく、作者もしっくりいかなかったのか「実録」として再スタートをしたところ大化けした(と自分は思っている)。
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(審判やってるとね、よくわかりますよ。高校生ぐらいだとどこか態度に出てしまう。スクイズかヒットエンドランか強硬策か‥。私はこのバッターはスクイズだとすぐ分かった。しかし、おいスクイズだぞなんて死んでも言えんわけです。)

江川卓は高校野球で国民的スターになったが、プロ入りの際に巨人に入団したいがために不正に手を貸したことが生涯の汚点となった。この漫画はそれを含め、高校時代のことから丁寧に取材をしている。江川の問題がどうかというより、情報の取捨選択を行う作者のその審美眼に痺れる作品だ。野球界の悪しき慣習に麻痺した人が出てくるのだが、一方的に断罪することはせず、きわどい部分に関して判断は読者に委ねている。もちろん作者の意図は行間に隠れている。大人の作品だ。
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(「明日朝、もう一度伺いたいんです。」「はっ‥?」「その時に門前払というか家の中に入れないでいただければと。」「良く意味がわかりませんが。」「こうしてお会いして断られるというより会う事もできなかったという事になりますと、つまり私の立場が立つという事なんです。)」

この漫画や「やぶれかぶれ」が面白いと思うのは、不良ワンダーランドの住人が、常識と対決することで新鮮な緊張感が生まれるからではないか。それは「サラリーマン金太郎」第一話で感じたことと同じだ。<続く>


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