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昌幸は病人!信之もドン引きする横山光輝の「徳川家康」 [歴史漫画]

「猫が鼠をいたぶるように」というのはみなもと太郎の徳川家康評。その家康をひたすら「良いように」描いて従来の悪いイメージを変えたのが山岡正八の小説、「徳川家康」であるらしい。横山光輝によってコミカライズされている。単行本全26巻と長編だ(1巻は1982年刊行)。所有している文庫版はそれを8冊にまとめていて、読みづらいことこの上ないので、最近になって読み返すために電子化した。

読みにくいのは分厚さだけではない。子供の頃はどうしても面白いと思えず、通読を挫折していた。大人になって読み返し、理由がわかった。忍耐の期間が長くて作風が暗いというのもあるが、主人公の家康が主人公としてあまり立ってないのだ。横山光輝といえば三国志。その作品での初期の劉備玄徳の少年漫画用の清廉潔白なキャラ付けはやりすぎ感もあるが、徳川家康を読むとそれぐらいは必要だったのかもしれないと思いなおした。
家康7c.png
さて、子供の頃は通読できなかった「徳川家康」だが、信繁(幸村)が出てくるとこだけはしっかり読んでいた。晩年のボスキャラの一人として、かなり扱いはでかい。子供の頃は記憶になかったが、昌幸の扱いが酷すぎて笑える。「真田丸」の昌幸像と近い。
(以下引用)
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「このまま幸村どのが大阪に入城なさればご兄弟また血で血を洗わねばなりませぬぞ。」

「だがら弟、幸村に手紙を出したのじゃ」

「たしかに出しました。ところが幸村どのは封も開かずに突き返したからといってあとに何もせずにいるとは、これはどういう事でござります。」

「叔父御は自分の兄であるそれがしの父を知らぬからそのように申されるのじゃ。」

「これはしたり。自分の兄の事をどうして知らぬといわれる。」

「父上はのう、武田信玄公の六人小姓の随一であった。」

「仰せまでもない。側小姓では抜群。これこそまさに麒麟児ぞと信玄公に度々舌をまかせたお方じゃ。」

「その事よ。お父上は偉すぎた。父上はその後戦い続け、戦えば必ず勝った。しかしその勝利が父上を誤らせたのだといえぬこともない。大御所にいわせるとお父上は兵学兵法の鬼であったが同時に病人でもあったと…。

「なんと兄が病人だったと!」
家康7a.png
「さよう天下にこの病人は三人あったそうな。その一人は黒田如水。もう一人は伊達政宗。そしてわしの父じゃ。」

「戦上手がどうして病人でござる。」

「天下は常に乱あるものゆえその主になりたい。…つまり天下取り病の三峰じゃとな。」

「それと九度山の幸村どのの口説きとなんのかかわりがございます。」

弟の幸村はその父の理想の子なのじゃわかるか叔父御…。父はのう関ヶ原の折になぜ西軍に味方されたと思う。」

「それは西軍にご懇意の方々が多かったためその義理を果たさんため…。」

「そうではないのだ。人の世は戦乱が常態で泰平はその間にわずかに点々と置かれてゆく休息の場。そういう根強い現世の見方に根ざしている。泰平など決して十年も続くものではない。したがって人の一生は戦争に賭けるべきだとの信念で関ヶ原の合戦を七分三分に見られたのじゃ。」

「七分三分…といわれると西軍の勝利が七分と…?」

「いや西軍の勝利は三分じゃ。七分の方に賭けて勝ってもせいぜいこの信之の十万石に一、二万石が加わるだけであろう。ところがもし西軍が勝った時どうなる。主謀者の石田も大谷もお父上にとってはみな弟子同様の人物。あわよくば天下を取るか取れなくても百万石の大大名にはなれる。
家康7b.png
「すると兄はそこまで考えて」

「そうじゃ。お父上は笑ってそう仰せられた。わしはその時、ゾーッとした。これは生き方の相違だと。」
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昌幸は「徳川家康」には登場しないが、「武田信玄」の後半に登場。「武田勝頼」では大活躍している。
勝頼2b.png
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