遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは3 [シリーズ]
強さのインフレを起こすたびにリアリティの崩壊を起こしつつも人気を爆発させてきたドラゴンボール。大人の経済的な事情により、延命を繰り返し続ける作品になってしまった。当初の構想はドクタースランプの縮小再生産だったことは過去記事で述べた。
第一回のドラゴンボール集め完了を期に、テコ入れである天下一武道会編が始まる。これが当たり、以降天下一武道会でアンケートの貯金を作り、そのあとに本来作者が描きたかったドラゴンボール集めという構成を繰り返すことになる。ちなみに第二回ドラゴンボール集めの敵役はご存知、レッドリボン軍である。ミリタリー好きな鳥山明ならではの設定だが、幹部連中に魅力があるのはブルー将軍ぐらいという不思議なクオリティ。ドクタースランプのキャラクターを途中登場させるなどのテコ入れを必要とする結果に。やはり好きなものを描かせてはダメという、鳥嶋氏のアドバイスは的を得ている様だ。
さて、当時読んでいて衝撃的だったのは、ドラゴンボールにおける修行が超重量を背負ってのトレーニングのみという点。亀仙人の修行プランを聞いた悟空が「技とか教えてくれよ」と文句を言っている。当時のカンフー漫画といえば、いかに修行を奇抜なものにするかというところに労力が注がれていた。スポ根を拒否し、ひたすらライトにクールに、ドライな演出をするのが鳥山明やあだち充の手法である。これがリアルタイムで読んでいてとても新鮮に映ったものである。バトル漫画がすでにありふれている少年ジャンプにおいて、差別化を図ることにも成功した。
そしてドラゴンボールの一大成功ギミックの一つであるスーパーサイヤ人の原型が3巻にしてすでに登場している。悟空、クリリン、亀仙人3人の男所帯と、しばらくむさ苦しい絵面が続くので、清涼剤として登場したキャラなのだろう。謎の家政婦、ランチさんである。くしゃみすれば黒髪の不思議少女が一転、金髪の怒れる戦士に。まるでスーパーサイヤ人である。
スーパーサイヤ人はフリーザ編の途中から登場が予告され、それがある一定以上の戦闘力になった悟空のことなのかと思われた。しかしその登場は誰の目にもはっきりわかる形で実現した。読者の誰もがこの展開に熱狂した。これこそが俺たちの求めた展開だと。しかしこの瞬間、読者がランチさんを連想しては台無しである。もしランチさんが正レギュラー化してナメック星にいたら?今日のドラゴンボールの大ヒットはなかったのかもしれない。
このことから、鳥山明がいつ頃からスーパーサイヤ人を構想していたのかが逆算できる。いわゆる「Z」となるサイヤ人編からランチさんは原作に一切登場しなくなっているからあからさまである。
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初めまして。
ランチさんがスーパーサイヤ人の原型、確かにそう見えたこともありますね!
by 師子乃 (2020-09-19 19:12)