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ゲーム雑誌を制したファミ通のクロスレビュー。読者が求めたのは「空気読む力」だった。 [ゲーム]

ゲーム雑誌として後発だったにも関わらず、業界を制した「ファミ通」。その原動力となった「クロスレビュー」という批評記事。様々な模倣、後追い企画はゲーム雑誌に留まらないが、ファミ通以上に成功したものは一切ない。ゲームを得点で評価するという企画も、ファミ通以前に天下の少年ジャンプで行われていたが回想する人は少ない。
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なぜファミ通のクロスレビューはこれほどまでに成功したのか。
そして他紙のクロスレビューは失敗したのか。
それは「空気読む」という評価基準がファミ通にあったからだ。

クロレビ批判をしてファミ通と険悪になったという飯野賢治がもっと点数のメリハリをつけたほうが良いと主張していたが、これが自分のあまり興味ないジャンルだったらどうだろう。
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例えば女性に奥手だった人が急にデートすることになり、店を選ばないといけないとなったら?何かもらったお返しにプレゼントしなければならないとなったら?この人は2点つけてるが、この人は10点つけてるというパターンが散見されるカタログ雑誌よりも、大体の評価が定まっている雑誌の方が安心するだろう。

ファミ通に追随した企画がことごとく滑っていたのはその辺が理由だと思う。尖ったライターが「俺ならもっといいものが作れる」と主観丸出しの点数をつける。大多数の読者が求めるものはそこにはなかったということだ。

その上で黄金期のクロレビには森下万里子という最強のレビュワーがいた。平均点6以上という、女性ならではの手心加え感、ほんとにゲームのことわかってんのかよ感あるレビュワーだった。
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しかし雑誌を読み込むと気づく。彼女が多くのゲームにつける6点が、実は0点の意味なのだと。映画解説者の故・水野晴郎は当たり障りのない解説の決め台詞、「いやあ、映画って本当にいいもんですね。」のイントネーションで本音を滲ませていたという。0点つけられたらメーカーに遺恨が発生して当然だと思うが6点では文句が言いにくい。よく出来ている。ちなみにこの森下万里子は架空の人物なのだそうだ。

インターネットが普及し、クロスレビューも一定の役割を終えた。
前回少し紹介した大澤良貴の「ゲーム雑誌のカラクリ」では、ファミ通のクロスレビューのことが色々書かれている。全2巻で、2巻の方が内容が濃い。ゲーム雑誌クロスレビューが面白い。高得点つけられた雑誌を読みたくなるが、2000年に出版された本なので、ほとんどの雑誌が今は無い。
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大澤氏は、ファミ通の空気を読みすぎるスタイルが時々問題を起こすと指摘しているが、近年クロスレビューの権威を失墜させたジョジョ事件もそれに当てはまると思う。

 




ゲーム雑誌のカラクリ

ゲーム雑誌のカラクリ

  • 作者: 大沢 良貴
  • 出版社/メーカー: キルタイムコミュニケーション
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 単行本



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