いけ好かないオシャレ漫画家の作品読んでニタニタしてしまう敗北。その作家、渋谷直角を語る：本棚持ち歩き隊！：SSブログ

	ブログをはじめるログイン

コンビニでバイト経験のある亡国のお姫様、.. ｜悲報！今週のはじめの一歩、やはり森川ジョ.. ブログトップ

いけ好かないオシャレ漫画家の作品読んでニタニタしてしまう敗北。その作家、渋谷直角を語る　[名作紹介] [編集]

ドコモのdマガジンで「SPA!」の渋谷直角の新作、オッサンが若くて可愛い女の子からアプローチかけられる展開で、読んでいてニタニタしてしまった。屈辱だ！

渋谷直角は最近映画化もされた「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」で知った。絵はとんでもなく下手だが、奥田民生の歌詞を引用しながらの見開きセックスシーンに光るものを感じて（上から目線）しまった。タイトルの「奥田民生になりたいボーイ」の部分、わかるわ〜と納得。漫画の新しいジャンルを確立してしまったのではないかとも思える。これは発明だ。

この漫画も「SPA!」に掲載され、綺麗な女の子がちょっとサイコパスな片鱗を見せたところで「あとは単行本で書き下ろします！」みたいな告知を後に長い間音沙汰がなかった。ヒロインのサイコパス的な展開にものすごく期待感が高まっていたのだが、検索しても出てくるのは「2巻が出ないのはスルーしてくれ」的な空気のみ。著者に、別の単行本が出ているのがわかり、そちらを購入してみた。

それが「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」だ。さっき久しぶりに読み返してみたが、やはりめちゃくちゃ面白かった。テーマは負犬、中二病、黒歴史になるのだろうか。身の丈に合わない高い意識を抱えた、傍から見たら痛々しい、でもどこか親近感を覚えるキャラクターたち。だからこそウルトラ下手な絵でも読めてしまうのかもしれない。趣味で漫画を描いてる高校生のノートを盗み見したみたいなドキドキ感がある。

諦めかけた頃「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」の単行本は発売されたが、これがいまいちだった。物語のクライマックスは「意外な真犯人」という平凡な展開の説明に焦点が置かれ、まるで作風に合ってない凡庸なアクションシーンにページが割かれている。期待していた「すべてを狂わせるガール」の見せ場はない。ついでに言うと、ヒロインがサイコパスな表情を見せたコマも修正されて無くなっていた。

本当にガッカリしたのだが、これが妻夫木聡主演で映画化され、しかも監督が大根仁と聞き、さらにガッカリした。これで渋谷直角は不動のオシャレ漫画家の地位を築いてしまうのか、なんと言うチャラい流れだ。「ケッ」と言う感じである。

今回、改めて「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」を読んでみたが、ラストの主人公による渋谷直角の批判シーンは良かった。本当に良かった。奥田民生になれないまま、一方で持ち上げられ、一方で嫌われるという人生の苛立ちが本人にもあるのかもしれないと思う。