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坂本弁護士拉致事件と地下鉄サリン事件の中間の1992年、漫画はオウムをどう書いたか?弘兼憲史/猪瀬直樹「ラストニュース」 [名作紹介]

前回紹介した「ラストニュース」には、まんまオウム真理教をモチーフにした話が出てくる。1巻に収録された9話のうち、6話がこの話だ。
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ラストニュースが信者数100万人を超える新興宗教団体の教祖に逮捕歴があると報道したところ、信徒たちがTV局に文句を言いに押し寄せる。

この反応に手応えを感じた主人公の日野プロデューサーは部下に逮捕の詳細の調査を指示。ところが部下は暴漢に襲われ、意識不明の重体に陥る。まだ地下鉄サリン事件の前の話だが、ある程度危険なことをやらかす団体というイメージはあったらしい。
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単行本が出版されたのは1992年。
アーチャリーの「止まった時計」によると、吉本隆明という有名らしい評論家が麻原彰晃を絶賛したのがこの年なんだそうだ。ちなみに前年がどんな年だったかというと、TVドラマ「東京ラブストーリー」が大ヒット、ジュリアナブーム、宮沢りえの写真集が話題だった年。「朝まで生テレビ」に麻原彰晃が出演したのもこの年なんだそうだ。89年に殺された坂本弁護士一家は、どんな気持ちでオウムに寛容な世間を見ていたのだろうか。

 
正直、この話あまり好きではない。
レスバトルに勝利して終わるからだ。
論破できるというのがそもそも思い上がりっぽくて嫌だ。
そのうち詳しく書きたいが、そもそも宗教にはそういうところがあると思う。
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キーマンになる住職の「人を許す、これが信仰の基本です」というセリフとコマはよくわからんけども「じーん」とくるものがある。

このセリフに麻原彰晃をモチーフにしたキャラクターは涙しながら跪き、自戒を始めるのだけれども、モチーフになった人間が実際にした最も大きなことは国家転覆を狙った毒ガス事件だ。百歩譲って作家がこの展開を思いついたとしても、リアリティを出すのは困難だろう。ある意味、幼稚園児的な発想と行動だ。論破できるという発想は、その人がいるコミュニティの狭さの表れなんではないかと思う。そういう意味でラストニュースのオチは根本の問題を矮小化し、逆にオウムに対し多少なりとも好感を持たせる結果になってしまっている。

 
ところでラストニュースのこの話、つかみが非常に面白い。
次回はそこを紹介したい。
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