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漫画は睡眠薬レイプをどう描いてきたのか? [心に残る1コマ]

本当に偶然も偶然なのだが磁場が働くのだろうか。
「こちら葛飾区亀有公園前派出所」105巻を電子化したら、その中に両さんが麗子のフィギュアを作るために睡眠薬を飲ませて採寸する話があって、血の気が引いた。
睡眠薬1.jpg
ファンの間でも流石にやり過ぎと言われている回である。掲載は1997年。
こち亀は全部持っている訳ではなく、少しづつランダムに買い進めている。今回二冊だけたまたま実家から持ってきた中の一冊がそれだったわけである。

二回に渡って批判してきた大谷昭宏の主張の中に、「フィギュアマニアは女性をフィギュア化するために殺す危険な人種」というのがあった。当時未解決の、ある誘拐殺人事件から氏が連想したものだ。性的欲求を満たすために心身の自由を奪おうとした結果起こった事故と考えるのが自然で、実際犯人も手記で同様のことを述べているらしい。激しい偏見の入った大谷氏はフィギュアマニアと強引に結びつけたわけだ。

こち亀の105巻には氏が嫌悪した恋愛シミュレーションの話(現在のスマホの課金ブームを予知した神回)も掲載されており、大谷氏の主張もここから刷り込まれたんじゃねーだろうかと思ったりする。

 
ところで睡眠薬で女性を眠らせるという行為を、漫画はどう描いてきたのだろうか。

まず思い出すのは初期のドラゴンボール(1984年ごろ)。
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ウーロンがブルマに一服盛ってスケべなことをしようとする話がある。
ところが盗賊のヤムチャの襲撃にあい、ウーロンは痴漢行為どころではなくなり睡眠不足に陥る。鳥山明の作風において、セックスそのものは基本的にタブーである。保母さんのおっぱいに触りたがるような、マセガキの度を越したいたずらとして描写されている。

さらに思い出すのが北条司の初期の「シティーハンター」(1985年ごろ)。
主人公の冴羽獠が仲間の冴子に一服盛ろうとする話がある。
セックスさせるという約束を餌に、獠をタダ働きさせ続ける冴子に対し、獠は睡眠薬を使い強引にことを成就しようとする。全て見透かしている冴子は逆に獠に睡眠薬を飲ませ、記憶のない獠をベッドに引き摺り込み、約束を守ったと嘘をついてさらなる貸しを作る。ルパン三世と峰不二子のような、大人の男と女の小粋なやりとりという感じだ。

花沢健吾の「ボーイズ・オン・ザ・ラン」の終盤(2008年ごろ?)では、美術モデルをやっているヒロインが、クライアントから睡眠薬を飲まされたことに気づいてトイレに籠城し、眠るまいと必死に耐え続ける話があった。

古谷実の「シガテラ」4巻(2005年)では純朴な好青年が友達の彼女を好きになり、睡眠薬で眠らせてレイプしたいという誘惑に葛藤する話がある。行為に及ぼうとした直前で、青年は思いとどまる。こういう妄想に自己嫌悪するという普遍的な思春期の男の子を象徴しているのだと思う。
睡眠薬21.png
青年は行為を思いとどまるのだが、共犯者の幼馴染が青年の見ていないところで事を成し遂げようとする。実際成し遂げたかどうかは曖昧になっていて、事件が起こったことそのものを被害者側は誰も気づいていない。同じことが読者の親しい女性にも起こりうるかもしれないという恐怖を描いている。

 
こういう描写は真似したやつがいたらどうするんだという問題もあるだろう。前述の大谷昭宏もウルトラ後出しで犯人はこち亀を読んで犯行に及んだと言い出すかもしれない。

しかし、もしも睡眠薬を手に入れたら…?という妄想は男の誰もが一度はすると思う。時間停止AVと同じぐらいのレベルで。実に漫画チックなワードで、あまりリアリティがないと思う男がほとんどだと思う。普通はしない。俺もしない。それでも実行してしまう男がいないわけではない。

世の中を無菌室にしてしまってはダメで、世界にはこんな汚い悪いことがありふれてるんだぞという現実も見せておかないと、いざ社会に出たらありふれた悪意に対して無防備すぎという人が増えるだけだ。

 
ちなみに最近ゴーマニズムに取り上げられたキッカケで、伊藤詩織の「Black Box」を購入し電子化した。就職の相談に言ったら睡眠薬を盛られ強姦されたと記者会見したのは聞いていたが、訴えた相手が小林よしのりを訴えるというややこしい展開になってるそうだ。まだ読めていない。

 
ところでこち亀のあの描写は色々と謎だ。
そもそも両さんの性欲は「おげれつビデオ」とかエロ本などで度々描写されるが、劇中に登場する人間に対して性欲を抱くことは(初期を除けば)ほとんどなく不自然だ。お金のためもあるのだろうが、女性を下着姿にして何の劣情も催さず採寸してる姿はこれまで感じていた異様さをさらに強調するシーンになっている。



 

こちら葛飾区亀有公園前派出所 105 (ジャンプコミックスDIGITAL)

こちら葛飾区亀有公園前派出所 105 (ジャンプコミックスDIGITAL)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1997/12/04
  • メディア: Kindle版





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