ガラスのシャワーで死なないアレクサンダー大王の10000人合同結婚式とは?ムロタニツネ象の「世界の歴史」3巻 [歴史漫画]
CanonScan LiDE400を購入。
ハードカバータイプの分厚い表紙をスキャンするためです。
前持っていたのは壊れてしまったけども、お手軽で長いこと使えたので同じ会社のものを。
性能は今の所。。。まだ使いこなせてないのかな。
そんなわけで「学研まんが 世界の歴史」の取り込み再開。
子供の頃、伝記漫画界のスターだったムロタニツネ象が全編を執筆。
タッチが独特だけども、「少年少女日本の歴史」のあおむら純に勝るとも劣らない傑作だと思う。
1巻から読み始めた時は退屈極まりなかったのだけど、3巻のアレクサンダー大王編から面白さが爆発。通して読んでしばらく経ってみても、アレクサンダー編が一番面白いと思う。
アレクサンダー大王はガラスのシャワーを浴びても傷一つつかない人としてよく知られているけども、細かいところでどんな生涯だったのか浸透していない。横山光輝三国志のような有名傑作コミカライズがないためだ。天才の岩明均の「ヒストリエ」があるけども、あれはあの時代のちょっと前を描くのがテーマなのか?
というわけで、1990年代に描かれた作品が今さら国民的大ヒット漫画にはならないとは思うが、「学研まんが 世界の歴史」3巻が今のところ暫定1位のアレクサンダー大王漫画である。
史上最大規模のロードムービーだ。
面白いなあと思うのが、次で最後、次で最後だからと兵士をなだめすかしながら東へ進軍し続けるものの、次から次へと新しい敵が現れ、世界の果ては一向に見えないものだから、とうとう兵たちがやる気をなくして帰ることになる展開。
疑問なのが、征服した土地にそこそこ兵は置いてきてるだろうけども、あんな広い規模で、ちゃんと占領を維持できるのかねということ。光栄の「信長の野望-全国版-」感覚で言うけど、アレクサンダー大王の東征って同ゲームで言うところのイナゴ作戦なんじゃなかろうか。常に全兵力を投入して次から次に攻め込む。当然空白地になった国は取られちゃいますわな。
国へ帰ることに決めたら決めたで、わざわざ危険な砂漠ルートを通って、兵の4分の3が死ぬ有様。
もう一つ面白いと思うのが、アレクサンダー大王の結婚観。
ウズベク共和国(どこだそりゃ)のあたりの難攻不落の岩城を、登山技術を駆使して攻略。城主が最後まで抵抗を諦めない中、そこのお姫様、ロクサネに結婚を申し込んで戦争を終わらせるという展開。なんともドラマチックだ。初婚だったのだろうか?
東征を終えて帰国の途についたものの、留守中の政治の腐敗っぷりに人間不信になったアレクサンダー大王は、10000人の合同結婚式をすることを思いつく。東征中に現地で妻を娶った者も多いので、改めてみんなで式を挙げようというイベントだ。
その後の展開がさらに斜め上。
「世界中の人間がまざり合えば、小さな国というわくがはずされ、世界国家としてまとまるという構想だ。」→わかる
「大王みずから手本をしめそう」→わかる
「わたしは、自分の敵であったペルシア王ダレイオス三世の娘スタティラを妻にしよう!」→ファッ?
当然ロクサネは面白いわけがない。
アレクサンダー死後、ロクサネはスタティラをおびき出し殺害。
合同結婚式も効果なかったのか、人種差別的な文脈でロクサネも跡取りもろとも殺されてしまった。
アレクサンダー大王の血筋は全て絶え、大王の版図は3つに分割統治された。
ハードカバータイプの分厚い表紙をスキャンするためです。
前持っていたのは壊れてしまったけども、お手軽で長いこと使えたので同じ会社のものを。
性能は今の所。。。まだ使いこなせてないのかな。
そんなわけで「学研まんが 世界の歴史」の取り込み再開。
子供の頃、伝記漫画界のスターだったムロタニツネ象が全編を執筆。
タッチが独特だけども、「少年少女日本の歴史」のあおむら純に勝るとも劣らない傑作だと思う。
1巻から読み始めた時は退屈極まりなかったのだけど、3巻のアレクサンダー大王編から面白さが爆発。通して読んでしばらく経ってみても、アレクサンダー編が一番面白いと思う。
アレクサンダー大王はガラスのシャワーを浴びても傷一つつかない人としてよく知られているけども、細かいところでどんな生涯だったのか浸透していない。横山光輝三国志のような有名傑作コミカライズがないためだ。天才の岩明均の「ヒストリエ」があるけども、あれはあの時代のちょっと前を描くのがテーマなのか?
というわけで、1990年代に描かれた作品が今さら国民的大ヒット漫画にはならないとは思うが、「学研まんが 世界の歴史」3巻が今のところ暫定1位のアレクサンダー大王漫画である。
史上最大規模のロードムービーだ。
面白いなあと思うのが、次で最後、次で最後だからと兵士をなだめすかしながら東へ進軍し続けるものの、次から次へと新しい敵が現れ、世界の果ては一向に見えないものだから、とうとう兵たちがやる気をなくして帰ることになる展開。
疑問なのが、征服した土地にそこそこ兵は置いてきてるだろうけども、あんな広い規模で、ちゃんと占領を維持できるのかねということ。光栄の「信長の野望-全国版-」感覚で言うけど、アレクサンダー大王の東征って同ゲームで言うところのイナゴ作戦なんじゃなかろうか。常に全兵力を投入して次から次に攻め込む。当然空白地になった国は取られちゃいますわな。
国へ帰ることに決めたら決めたで、わざわざ危険な砂漠ルートを通って、兵の4分の3が死ぬ有様。
もう一つ面白いと思うのが、アレクサンダー大王の結婚観。
ウズベク共和国(どこだそりゃ)のあたりの難攻不落の岩城を、登山技術を駆使して攻略。城主が最後まで抵抗を諦めない中、そこのお姫様、ロクサネに結婚を申し込んで戦争を終わらせるという展開。なんともドラマチックだ。初婚だったのだろうか?
東征を終えて帰国の途についたものの、留守中の政治の腐敗っぷりに人間不信になったアレクサンダー大王は、10000人の合同結婚式をすることを思いつく。東征中に現地で妻を娶った者も多いので、改めてみんなで式を挙げようというイベントだ。
その後の展開がさらに斜め上。
「世界中の人間がまざり合えば、小さな国というわくがはずされ、世界国家としてまとまるという構想だ。」→わかる
「大王みずから手本をしめそう」→わかる
「わたしは、自分の敵であったペルシア王ダレイオス三世の娘スタティラを妻にしよう!」→ファッ?
当然ロクサネは面白いわけがない。
アレクサンダー死後、ロクサネはスタティラをおびき出し殺害。
合同結婚式も効果なかったのか、人種差別的な文脈でロクサネも跡取りもろとも殺されてしまった。
アレクサンダー大王の血筋は全て絶え、大王の版図は3つに分割統治された。
「ゴールデンカムイ」で大人気!土方歳三は漫画でどう描かれてきたのか [歴史漫画]
人気漫画「ゴールデンカムイ」で大活躍中の土方歳三。
いろんな漫画に出てるとこを集めて一挙に紹介しようと思いました。
野田サトル「ゴールデンカムイ」
ゴールデンカムイでの土方は函館で死なず生き延びており、同じく老人となった永倉と供に回天のために大暴れする、本作のコンセプトを象徴する重要なキャラクターとなっている。
和月伸宏「るろうに剣心北海道編」
元祖「るろうに剣心」では土方をモデルにした四乃森蒼紫が大活躍していたが、北海道編では写真館のシーンであの有名な肖像が大登場。「剣力はさほどでもなかったけども、すこぶる戦巧者」という剣心の解説付き。土方は農民上がりで新選組のプロデューサー的立場。剣は沖田。リーダーは近藤なので、どうしても剣はそこそこという描かれ方をするのが常。なので「るろうに剣心」でも定石を踏んでいる。
でも人の命が紙切れのようにバッサバッサと切られていくるろ剣幕末編の世界の中で、戦巧者というのはどんな感じで描写されるんですかね。生半可な策略は通じそうにないですけど。しかも回想シーンではメチャクチャ直接斬り合ってますやん。
でぇ、その回想シーンを改めて見ると、土方が剣心の剣先をつまんでるように見える!
しかも逆刃刀時代ではない剣心の刀をですよ!?
これ、何かのスタンド能力を持っているってことでしょうか。
その辺が戦巧者ということ?
北海道編の土方登場は単なるファンサービスかと思ってたんですけど、今回の敵の黒幕ってこともあり得るかもしれませんな。生きていた土方歳三ってネタを今やるのはゴールデンカムイにかぶっちゃって、あまり得策じゃない気もしますけど。
手塚治虫「陽だまりの樹」
終盤に近藤勇と一緒にちょっとだけ登場。主人公と対立する芹沢鴨を諌める計算高い男として描写されている。ちなみにこの話を収録した愛蔵版の表紙が土方歳三の写真だった。
車田正美「あかね色の風」
ひじかた?しじかた?苗字が読みにくいというのは歳三あるあるだが、この漫画ではチンピラに「どかた」と何度も呼び間違えられる。顔はまんま「リングにかけろ」の剣崎順。初登場はセックスシーンから。女にモテモテなのも土方描写の定番である。
赤名修「ダンダラ」
世界拷問旅漫画で有名な「勇午」の作者による作品。
白黒TVの時代劇「新選組血風録」のあまりの面白さに一気見してしまったという、俺と同じ体験からこの作品を描くに至ったという。残念ながら1巻で打ち切りのよう。意外にあまり出番がなく、最終話でようやく見せ場が作られる。芹沢鴨が佐藤浩市そっくりだが、三谷幸喜の「新選組!」以前のもの。帯の推薦者は新選組血風録で土方を演じた栗塚旭。
あおむら純「少年少女 日本の歴史」
16巻に登場。
本の性質上、あまり尺を取れず、なんてことはない描写に終わっているが、近藤に「歳さん」と呼ばせることで作者の思いを全て込めている気がする。
小山ゆう「お〜い!竜馬」
ほぼ沖田のオプション扱いで見せ場というほどのものはないが、竜馬に振り回されてポーカーフェイスが崩されるという役所で出演。一応函館で戦死する結末もダイジェストで紹介される。
ヒラマツ・ミノル「アサギロ」
豊川悦司がモデルなんじゃなかろうか。
沖田総司が主人公の漫画だが、土方登場編はたっぷり長編で描写されている。やはり色男で剣の腕はそこそこという感じ。この漫画、新選組漫画の一つの峠であり、だいたい超えることができない芹沢鴨暗殺以降も連載が続行。鬼の副長っぷりが見れるので要注目だ。
ながやす巧/浅田次郎「壬生義士伝」
新選組隊士、吉村貫一郎を主人公にした小説の漫画版。凄腕の剣客でありながら事情あって凄腕の守銭奴でもある貫一郎に、土方が閉口するさまなどが面白い。
みなもと太郎「冗談新選組」
土方を主人公に、ダイジェストな感じでスピーディに顛末を追いかけるギャグ漫画。今見ると落書きのような凄まじい絵柄だが、みなもと太郎が漫画界に与えた影響は少なくなく、「アオイホノオ」にも引用されている。冗談新選組は三谷幸喜が愛読してのちの大河ドラマ「新選組!」のネタ本となったりしている。
望月三起也「俺の新選組」
ワイルド7の作者による土方歳三が主人公の新選組漫画。
土方が主人公だが、あまり超人的な力を持っているようには描写されておらず、時には耐え忍ばなければ切り抜けられない展開があるのが面白い漫画。剣の達人でも少しの油断で殺されてしまう緊張感ある世界観が素晴らしい。ふた昔前といった作風だが、よく見るとペンによる作画も素晴らしい。職人技であり、必読の傑作だと思う。
いろんな漫画に出てるとこを集めて一挙に紹介しようと思いました。
野田サトル「ゴールデンカムイ」
ゴールデンカムイでの土方は函館で死なず生き延びており、同じく老人となった永倉と供に回天のために大暴れする、本作のコンセプトを象徴する重要なキャラクターとなっている。
和月伸宏「るろうに剣心北海道編」
元祖「るろうに剣心」では土方をモデルにした四乃森蒼紫が大活躍していたが、北海道編では写真館のシーンであの有名な肖像が大登場。「剣力はさほどでもなかったけども、すこぶる戦巧者」という剣心の解説付き。土方は農民上がりで新選組のプロデューサー的立場。剣は沖田。リーダーは近藤なので、どうしても剣はそこそこという描かれ方をするのが常。なので「るろうに剣心」でも定石を踏んでいる。
でも人の命が紙切れのようにバッサバッサと切られていくるろ剣幕末編の世界の中で、戦巧者というのはどんな感じで描写されるんですかね。生半可な策略は通じそうにないですけど。しかも回想シーンではメチャクチャ直接斬り合ってますやん。
でぇ、その回想シーンを改めて見ると、土方が剣心の剣先をつまんでるように見える!
しかも逆刃刀時代ではない剣心の刀をですよ!?
これ、何かのスタンド能力を持っているってことでしょうか。
その辺が戦巧者ということ?
北海道編の土方登場は単なるファンサービスかと思ってたんですけど、今回の敵の黒幕ってこともあり得るかもしれませんな。生きていた土方歳三ってネタを今やるのはゴールデンカムイにかぶっちゃって、あまり得策じゃない気もしますけど。
手塚治虫「陽だまりの樹」
終盤に近藤勇と一緒にちょっとだけ登場。主人公と対立する芹沢鴨を諌める計算高い男として描写されている。ちなみにこの話を収録した愛蔵版の表紙が土方歳三の写真だった。
車田正美「あかね色の風」
ひじかた?しじかた?苗字が読みにくいというのは歳三あるあるだが、この漫画ではチンピラに「どかた」と何度も呼び間違えられる。顔はまんま「リングにかけろ」の剣崎順。初登場はセックスシーンから。女にモテモテなのも土方描写の定番である。
赤名修「ダンダラ」
世界拷問旅漫画で有名な「勇午」の作者による作品。
白黒TVの時代劇「新選組血風録」のあまりの面白さに一気見してしまったという、俺と同じ体験からこの作品を描くに至ったという。残念ながら1巻で打ち切りのよう。意外にあまり出番がなく、最終話でようやく見せ場が作られる。芹沢鴨が佐藤浩市そっくりだが、三谷幸喜の「新選組!」以前のもの。帯の推薦者は新選組血風録で土方を演じた栗塚旭。
あおむら純「少年少女 日本の歴史」
16巻に登場。
本の性質上、あまり尺を取れず、なんてことはない描写に終わっているが、近藤に「歳さん」と呼ばせることで作者の思いを全て込めている気がする。
小山ゆう「お〜い!竜馬」
ほぼ沖田のオプション扱いで見せ場というほどのものはないが、竜馬に振り回されてポーカーフェイスが崩されるという役所で出演。一応函館で戦死する結末もダイジェストで紹介される。
ヒラマツ・ミノル「アサギロ」
豊川悦司がモデルなんじゃなかろうか。
沖田総司が主人公の漫画だが、土方登場編はたっぷり長編で描写されている。やはり色男で剣の腕はそこそこという感じ。この漫画、新選組漫画の一つの峠であり、だいたい超えることができない芹沢鴨暗殺以降も連載が続行。鬼の副長っぷりが見れるので要注目だ。
ながやす巧/浅田次郎「壬生義士伝」
新選組隊士、吉村貫一郎を主人公にした小説の漫画版。凄腕の剣客でありながら事情あって凄腕の守銭奴でもある貫一郎に、土方が閉口するさまなどが面白い。
みなもと太郎「冗談新選組」
土方を主人公に、ダイジェストな感じでスピーディに顛末を追いかけるギャグ漫画。今見ると落書きのような凄まじい絵柄だが、みなもと太郎が漫画界に与えた影響は少なくなく、「アオイホノオ」にも引用されている。冗談新選組は三谷幸喜が愛読してのちの大河ドラマ「新選組!」のネタ本となったりしている。
望月三起也「俺の新選組」
ワイルド7の作者による土方歳三が主人公の新選組漫画。
土方が主人公だが、あまり超人的な力を持っているようには描写されておらず、時には耐え忍ばなければ切り抜けられない展開があるのが面白い漫画。剣の達人でも少しの油断で殺されてしまう緊張感ある世界観が素晴らしい。ふた昔前といった作風だが、よく見るとペンによる作画も素晴らしい。職人技であり、必読の傑作だと思う。
あした介錯になっても困らない!漫画で学ぶ介錯のコツ。ながやす巧「壬生義士伝」8巻 [歴史漫画]
引き続き「壬生義士伝」8巻の話を。
後半は「るろうに剣心」の谷十三郎のモデルになった谷三十郎のお話が面白かった。
士道不覚悟で切腹することになった部下の、必死の命乞いをする谷三十郎。
その真意は、衆人環視で役目上やらなければならない切腹のトドメである介錯。
この介錯スキルが無いことがバレたくないためであった。
壬生義士伝での谷三十郎は、家柄を鼻にかけて上手くボスに取り入り、剣術においても講釈ばっかりたれているという鼻持ちならないキャラクターとして描かれているが、これには同情してしまう。
「あ〜っ、明日屯所爆発しねえかなあ!」
とか思っていたに違いない。
かねてから谷三十郎ぶっ殺したいと思っていた斎藤一は、これは亡き者にするチャンスと思い一計を案じる。深夜、相談に来た谷三十郎に、「力一杯ぶっ叩け!」と嘘のアドバイスをするのだった。
翌日、自信満々でぶっ叩きに行った谷三十郎だったが、刃を引ききらないので骨が砕けるばかり。キリンさんのように切腹隊士の首は伸びて悲鳴が上がる、それになんどもぶっ叩き続ける谷三十郎という地獄絵図。「士道不覚悟!」と谷三十郎を成敗しようとする斎藤だったが、また吉村貫一郎に邪魔されて因縁が勃発してしまうという展開になっている。
壬生義士伝によると、
「据え首を落とすには骨の間に狙いを定めて鎺元(はばきもと)から切先まで十分に挽き切らねばならぬ」
「命のやりとりを知らぬ者は斬り合いよりも介錯のほうが簡単だと思うであろうが実はそうではない。覚悟を決めた人間の首を落とすには斬り合いとは別の胆力が要るものじゃ。ましてや同じ釜の飯を食うた仲間ともなればその命をおのれが奪う胆力たるやなまなかではない」
と、介錯の難しさを語っている。
ちなみに、横山光輝/新田次郎の「武田信玄」2巻では、武田家に滅ぼされた諏訪頼重が、切腹の作法を知らないと重臣板垣信方を責めるシーンがある。これが戦国時代の作法なのか、それ以前の室町時代にメジャーだった作法なのかよく分からないが、とにかく時代によっても違うようだ。ここに出てくる作法には介錯が無く、腹を十文字にかき切ったあと、最後に右乳首の下を突くのが作法というのが面白い。
後半は「るろうに剣心」の谷十三郎のモデルになった谷三十郎のお話が面白かった。
士道不覚悟で切腹することになった部下の、必死の命乞いをする谷三十郎。
その真意は、衆人環視で役目上やらなければならない切腹のトドメである介錯。
この介錯スキルが無いことがバレたくないためであった。
壬生義士伝での谷三十郎は、家柄を鼻にかけて上手くボスに取り入り、剣術においても講釈ばっかりたれているという鼻持ちならないキャラクターとして描かれているが、これには同情してしまう。
「あ〜っ、明日屯所爆発しねえかなあ!」
とか思っていたに違いない。
かねてから谷三十郎ぶっ殺したいと思っていた斎藤一は、これは亡き者にするチャンスと思い一計を案じる。深夜、相談に来た谷三十郎に、「力一杯ぶっ叩け!」と嘘のアドバイスをするのだった。
翌日、自信満々でぶっ叩きに行った谷三十郎だったが、刃を引ききらないので骨が砕けるばかり。キリンさんのように切腹隊士の首は伸びて悲鳴が上がる、それになんどもぶっ叩き続ける谷三十郎という地獄絵図。「士道不覚悟!」と谷三十郎を成敗しようとする斎藤だったが、また吉村貫一郎に邪魔されて因縁が勃発してしまうという展開になっている。
壬生義士伝によると、
「据え首を落とすには骨の間に狙いを定めて鎺元(はばきもと)から切先まで十分に挽き切らねばならぬ」
「命のやりとりを知らぬ者は斬り合いよりも介錯のほうが簡単だと思うであろうが実はそうではない。覚悟を決めた人間の首を落とすには斬り合いとは別の胆力が要るものじゃ。ましてや同じ釜の飯を食うた仲間ともなればその命をおのれが奪う胆力たるやなまなかではない」
と、介錯の難しさを語っている。
ちなみに、横山光輝/新田次郎の「武田信玄」2巻では、武田家に滅ぼされた諏訪頼重が、切腹の作法を知らないと重臣板垣信方を責めるシーンがある。これが戦国時代の作法なのか、それ以前の室町時代にメジャーだった作法なのかよく分からないが、とにかく時代によっても違うようだ。ここに出てくる作法には介錯が無く、腹を十文字にかき切ったあと、最後に右乳首の下を突くのが作法というのが面白い。
武田信玄と上杉謙信の一騎打ちは真実か!?「歴史人」と「逆説の日本史」が激突! [歴史漫画]
dマガジンで「歴史人」を時々読んでる。
けど、あまり面白くない。
いや肌に合わないねこの本。
毎回思うけど、なんでだろう。
今月号(2019年1月号)は武田信玄。
武田好きなら読まざるをえまい。
でもやっぱりあまり頭に入ってこないのであった。
なんでかね。
レイアウトなのか、語り口なのか、コンセプトなのか。
唯一、甲陽軍鑑は偽書なのか?という特集ページがインパクトあった。
ええー、多少事実と違うとこもあるぐらいって認識されてる印象だったけど、偽書まで言われちゃってたのかよ。「偽書『武功夜話』の研究」って本を読んだことあるけど、そんなノリなのかよ!?
山岡荘八/横山光輝の「武田信玄」にて、山本勘助の息子が甲陽軍鑑の作者だと紹介されるコマがある。彼が高坂弾正の名を語って父親の手柄をでっち上げたという説があり、このコミカライズは悲しいことにその説をとっているということになる。
しかし近年、研究によって高坂弾正が書いた真実の書という解釈が学会の常識になっているのだそうだ。細かい話は省く。しかし、それでも「歴史人」では、でもやっぱ胡散臭いとこあるよねー。あっ、学ぶべきところも多いよ!物語としては一級品だね!みたいな感じで書かれている。
数日後、なんとなく一ヶ月前の週刊ポスト(11月16日号)をdマガジンで読んでいたら、「逆説の日本史」の井沢元彦がコラムで「俺の言った通り、甲陽軍鑑本物だったじゃんイエーイ!」と派手にぶち上げているのが目に入ってきた。その瞬間、「これは面白い!」と思った。氏は連載を中断して、4週にわたってこのことについて熱弁をふるっていた。NHKの歴史ヒストリアで、権威である偉い先生が学会の誤りを認めたのがキッカケなのだそうだ。ちなみに件の歴史人は12月6日発売。
ワクワクしながら「逆説の日本史」と「歴史人」の二冊を繰り返し読み返す。大きな相違点は武田信玄と上杉謙信の一騎打ちはあったかなかったか。歴史人は「いやいやいや、常識的に考えて大将同士が一騎打ちとか普通ないっしょ!」という態度。井沢氏は「大将が襲撃されたのなら大失態。そんな失態をわざわざ幹部が捏造するはずがない」という感じで書いている。
まああの一騎打ちは正直ちょっと出来すぎていると思う。他に大将同士の一騎打ちなんて聞いたことないからリアリティがないという歴史人の態度もわかる。
(小学館の「少年少女 日本の歴史」10巻/1982年初版。わざわざフィクションかもしれないと欄外で断りを入れている)
しかし、正真正銘の幹部が書いた記録と学会が認めたというなら、その意味合いは全然変わってくる。井沢氏の言う大失態論もそうだが、わざわざそんなファンタジーをこんなところに盛り込む必要があるのかと言うことだ。偉い立場にいる人がだ。歴史人の理屈は甲陽軍鑑の性質が変わったことで、逆に甲陽軍鑑の正しさを証明する理屈としてもそのまま使えると言う、自己矛盾に陥ってしまっている。だから歴史人は「物語としては一級品」などと、まだ甲陽軍鑑に不満タラタラなわけである。すごい面白い。
ところで、今回一番高いブランデーで祝杯をあげたと言う井沢元彦氏。最近発売された「反逆の日本史」のコミック版を読んだのだが、すごい面白かった。作画のクオリティも高い。刊行ペースが遅くなるのは痛し痒しだが、こういう歴史漫画シリーズにありがちな、むやみやたらに作家雇って乱発してクオリティを下げるパターンに陥らないように祈りたい。そんな出来だ。
あと、youtubeで見た、山梨県立博物館学芸員の海老沼真治さんによる山本勘助が実在したことを発表する講演会?の動画がすごい面白かった。作業用BGMとして繰り返し聞いている。こんな動画が4年経っても再生数2000回にいってないのである。世の中間違っとるなー。。。
けど、あまり面白くない。
いや肌に合わないねこの本。
毎回思うけど、なんでだろう。
今月号(2019年1月号)は武田信玄。
武田好きなら読まざるをえまい。
でもやっぱりあまり頭に入ってこないのであった。
なんでかね。
レイアウトなのか、語り口なのか、コンセプトなのか。
唯一、甲陽軍鑑は偽書なのか?という特集ページがインパクトあった。
ええー、多少事実と違うとこもあるぐらいって認識されてる印象だったけど、偽書まで言われちゃってたのかよ。「偽書『武功夜話』の研究」って本を読んだことあるけど、そんなノリなのかよ!?
山岡荘八/横山光輝の「武田信玄」にて、山本勘助の息子が甲陽軍鑑の作者だと紹介されるコマがある。彼が高坂弾正の名を語って父親の手柄をでっち上げたという説があり、このコミカライズは悲しいことにその説をとっているということになる。
しかし近年、研究によって高坂弾正が書いた真実の書という解釈が学会の常識になっているのだそうだ。細かい話は省く。しかし、それでも「歴史人」では、でもやっぱ胡散臭いとこあるよねー。あっ、学ぶべきところも多いよ!物語としては一級品だね!みたいな感じで書かれている。
数日後、なんとなく一ヶ月前の週刊ポスト(11月16日号)をdマガジンで読んでいたら、「逆説の日本史」の井沢元彦がコラムで「俺の言った通り、甲陽軍鑑本物だったじゃんイエーイ!」と派手にぶち上げているのが目に入ってきた。その瞬間、「これは面白い!」と思った。氏は連載を中断して、4週にわたってこのことについて熱弁をふるっていた。NHKの歴史ヒストリアで、権威である偉い先生が学会の誤りを認めたのがキッカケなのだそうだ。ちなみに件の歴史人は12月6日発売。
ワクワクしながら「逆説の日本史」と「歴史人」の二冊を繰り返し読み返す。大きな相違点は武田信玄と上杉謙信の一騎打ちはあったかなかったか。歴史人は「いやいやいや、常識的に考えて大将同士が一騎打ちとか普通ないっしょ!」という態度。井沢氏は「大将が襲撃されたのなら大失態。そんな失態をわざわざ幹部が捏造するはずがない」という感じで書いている。
まああの一騎打ちは正直ちょっと出来すぎていると思う。他に大将同士の一騎打ちなんて聞いたことないからリアリティがないという歴史人の態度もわかる。
(小学館の「少年少女 日本の歴史」10巻/1982年初版。わざわざフィクションかもしれないと欄外で断りを入れている)
しかし、正真正銘の幹部が書いた記録と学会が認めたというなら、その意味合いは全然変わってくる。井沢氏の言う大失態論もそうだが、わざわざそんなファンタジーをこんなところに盛り込む必要があるのかと言うことだ。偉い立場にいる人がだ。歴史人の理屈は甲陽軍鑑の性質が変わったことで、逆に甲陽軍鑑の正しさを証明する理屈としてもそのまま使えると言う、自己矛盾に陥ってしまっている。だから歴史人は「物語としては一級品」などと、まだ甲陽軍鑑に不満タラタラなわけである。すごい面白い。
ところで、今回一番高いブランデーで祝杯をあげたと言う井沢元彦氏。最近発売された「反逆の日本史」のコミック版を読んだのだが、すごい面白かった。作画のクオリティも高い。刊行ペースが遅くなるのは痛し痒しだが、こういう歴史漫画シリーズにありがちな、むやみやたらに作家雇って乱発してクオリティを下げるパターンに陥らないように祈りたい。そんな出来だ。
あと、youtubeで見た、山梨県立博物館学芸員の海老沼真治さんによる山本勘助が実在したことを発表する講演会?の動画がすごい面白かった。作業用BGMとして繰り返し聞いている。こんな動画が4年経っても再生数2000回にいってないのである。世の中間違っとるなー。。。
武田信玄 コミック 全10巻完結セット (歴史コミック) [マーケットプレイス コミックセット]
- 作者: 横山 光輝 新田 次郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1988/06/06
- メディア: コミック
イギリスが日本攻略具体化、9隻の軍艦で海上封鎖を計画 [歴史漫画]
「コミック乱」連載、みなもと太郎の「風雲児たち」、面白くなってきましたなあ。
生麦事件が起こっているというのに、東禅寺でさらに外国人殺傷事件。しかも同じ場所で二度目。一度目の賠償交渉中に!トラブルが重なることで炎上は起きる。いよいよイギリスが具体的に日本侵攻を考え出した。
大河ドラマ「せごどん」では薩英戦争スルーされたとかTwitterで見かけましたけど、やっぱりお金かかるからやらないのかな。薩英戦争のコミカライズって見た記憶がないけども、あったら教えて欲しい。長州藩vs外国の下関戦争も、歴史漫画ではいきなり終わってるのが多いのでは。大砲を占拠されてる有名な写真1枚で終わりみたいな。
これらも「風雲児たち」では丹念に描写されるのだろうなあ。楽しみだなあ。
さすが坂本龍馬のすごさを語りたいがために、関ヶ原から40年近く連載してきた漫画だよ。連載長すぎて作者の生きているうちに完結できるのかが心配。描き切れるのかなあ。
(画像はとりみき/田北鑑生「ダイホンヤ」から、説明長すぎるギャグ)
千年に一人の美人政治家妻の旦那のセクシーさ!安彦良和「王道の狗」人物伝5:陸奥宗光 [歴史漫画]
「王道の狗」の歴史キャラ解釈を褒め称えるシリーズ5回目は陸奥宗光。
小山ゆうの名作「お〜い!竜馬」で、その若き日の姿がよく知られている。
王道の狗では老成した陸奥がラスボスなのである。
めちゃくちゃセクシーな悪役なので必見だ。
外野の批判なんてどこ吹く風。
大を生かすために小を殺す。シャレにならないぐらい悪いこともしているが、自分の信じた道を命をかけて貫く、これぞ国家経営者と思えないこともない。ちなみに王道の狗の主人公は貫真人(つらぬきまひと)という名前を与えられているが、主人公以上に貫真人だ。
よくネットで時代を超えた美人と騒がれる、陸奥宗光夫人の亮子も本作に登場する。特に見せ場もないが、単なる華やかしでなく、陸奥の腹黒さも全て呑み込んだ上で連れ添っているのを1コマで表現しているのがすごく良いのだ。狡猾な陸奥が、彼女については不憫だと泣くシーンもすごく良い。
思うに政治家というのはすごく深みが表現できるキャラなのだ。
大を生かすために小を殺さざるを得ない。
家族に飯を食わせる責任のない人間が、人類皆平等だと言うのは楽だ。
陸奥と敵対する主人公は、嫌が応にもそういうことを学んでいき、その上で自分が貫く道を見つけていく。
この漫画は勝海舟も良い。
「大事なのは人物だよ。言ってることや党派なんてどうだっていいのサ。主義主張はどうにでも変わるけど人物は変わりゃしないからね。」「陸奥には気をおつけ。あれは頭がいいよ。坂本龍馬の子分だった頃一緒にめんどうを見てやったが薄情な男サ。昔の弟子はみんな一度は顔を見せたがね。来ないのは陸奥だけ。人物だねえ…。」
そんな二人が大好きだったという坂本龍馬とはどんな人物だったのだろう。
この漫画は、後半は勝海舟が作った新造艦を主人公が操ってアジアの海で暗躍するという、坂本龍馬が明治に生きていたら的なテーマもある。
小山ゆうの名作「お〜い!竜馬」で、その若き日の姿がよく知られている。
王道の狗では老成した陸奥がラスボスなのである。
めちゃくちゃセクシーな悪役なので必見だ。
外野の批判なんてどこ吹く風。
大を生かすために小を殺す。シャレにならないぐらい悪いこともしているが、自分の信じた道を命をかけて貫く、これぞ国家経営者と思えないこともない。ちなみに王道の狗の主人公は貫真人(つらぬきまひと)という名前を与えられているが、主人公以上に貫真人だ。
よくネットで時代を超えた美人と騒がれる、陸奥宗光夫人の亮子も本作に登場する。特に見せ場もないが、単なる華やかしでなく、陸奥の腹黒さも全て呑み込んだ上で連れ添っているのを1コマで表現しているのがすごく良いのだ。狡猾な陸奥が、彼女については不憫だと泣くシーンもすごく良い。
思うに政治家というのはすごく深みが表現できるキャラなのだ。
大を生かすために小を殺さざるを得ない。
家族に飯を食わせる責任のない人間が、人類皆平等だと言うのは楽だ。
陸奥と敵対する主人公は、嫌が応にもそういうことを学んでいき、その上で自分が貫く道を見つけていく。
この漫画は勝海舟も良い。
「大事なのは人物だよ。言ってることや党派なんてどうだっていいのサ。主義主張はどうにでも変わるけど人物は変わりゃしないからね。」「陸奥には気をおつけ。あれは頭がいいよ。坂本龍馬の子分だった頃一緒にめんどうを見てやったが薄情な男サ。昔の弟子はみんな一度は顔を見せたがね。来ないのは陸奥だけ。人物だねえ…。」
そんな二人が大好きだったという坂本龍馬とはどんな人物だったのだろう。
この漫画は、後半は勝海舟が作った新造艦を主人公が操ってアジアの海で暗躍するという、坂本龍馬が明治に生きていたら的なテーマもある。
王道の狗 全4巻 完結セット (JETS COMICS) [コミックセット]
- 作者: 安彦 良和
- 出版社/メーカー:
- メディア: コミック
お~い! 竜馬 文庫版 コミック 全14巻セット (小学館文庫)
- 作者: 武田 鉄矢
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/03/01
- メディア: 文庫
日露戦争の諜報戦に暗躍したスーパーおじいちゃん、みなもと太郎「松吉伝」 [歴史漫画]
ちょっと前、まとめサイトで愛新覚羅(あいしんかくら)という珍しい名字のお医者さんが話題になっていた。調べてみると、定期的に話題になっているらしいが。愛新覚羅はラストエンペラー溥儀の名字で、日本にその末裔がたくさんいるのだそうだ。
自分が愛新覚羅で思い出すのは、みなもと太郎の「松吉伝」。
坂本龍馬の偉大さを伝えたいがために関ヶ原の合戦から話を始め、1979年に連載を開始して39年かかって現在生麦事件までたどり着いた漫画、「風雲児たち」の作者であるみなもと太郎が、スーパーおじいちゃんについて語った一冊だ。
子供ながらに只者でないと違和感があった祖父、松吉の逝去後、遺品を整理する過程で甘粕正彦と交流があったことを知ったみなもと太郎は、ここから長い年月をかけておぼろげな祖父の実像を掴んでいく。
明治天皇の近衛兵試験を優秀な成績でクリアし、日露戦争の諜報戦で活躍。抗日運動の活発化した朝鮮の田舎で警察長官をし、満州国の建国にも関わっていたという。
同居していた元新聞記者の父が、詳しい話を聞き出そうとしていたが口が堅く、失敗している(このコマがすごい好き)。
わずかながらに日露戦争勝利の秘密のごく一部を聞き出してはいるが、全く裏の取れない話であることを作者も理解しているので、「眉唾」とした上で描写している。
ちなみに、安彦良和の「天の血脈」だったかに件の甘粕正彦と、のちに彼に殺される大杉栄が登場する。この松吉伝で、その大杉事件の映画を見た松吉が、甘粕はあんな男ではないと憤慨するシーンがある。大杉事件ってどんなのだったんだろうと、ずっと漫画で読んでみたかったのだが、なんと天の血脈ではそれが一切描写されずに終わってしまっていて心底がっかりした。打ち切り?
ちなみに天の血脈(虹色トロツキーだったかも)では、みなもと太郎ギャグがあった。
そういえば安彦良和は風雲児たちの帯の推薦文も書いていたような気がする。松吉伝も読んでいるのだろうが、それが天の血脈の前だったのか後だったのか。いずれにしても惜しい。
自分が愛新覚羅で思い出すのは、みなもと太郎の「松吉伝」。
坂本龍馬の偉大さを伝えたいがために関ヶ原の合戦から話を始め、1979年に連載を開始して39年かかって現在生麦事件までたどり着いた漫画、「風雲児たち」の作者であるみなもと太郎が、スーパーおじいちゃんについて語った一冊だ。
子供ながらに只者でないと違和感があった祖父、松吉の逝去後、遺品を整理する過程で甘粕正彦と交流があったことを知ったみなもと太郎は、ここから長い年月をかけておぼろげな祖父の実像を掴んでいく。
明治天皇の近衛兵試験を優秀な成績でクリアし、日露戦争の諜報戦で活躍。抗日運動の活発化した朝鮮の田舎で警察長官をし、満州国の建国にも関わっていたという。
同居していた元新聞記者の父が、詳しい話を聞き出そうとしていたが口が堅く、失敗している(このコマがすごい好き)。
わずかながらに日露戦争勝利の秘密のごく一部を聞き出してはいるが、全く裏の取れない話であることを作者も理解しているので、「眉唾」とした上で描写している。
ちなみに、安彦良和の「天の血脈」だったかに件の甘粕正彦と、のちに彼に殺される大杉栄が登場する。この松吉伝で、その大杉事件の映画を見た松吉が、甘粕はあんな男ではないと憤慨するシーンがある。大杉事件ってどんなのだったんだろうと、ずっと漫画で読んでみたかったのだが、なんと天の血脈ではそれが一切描写されずに終わってしまっていて心底がっかりした。打ち切り?
ちなみに天の血脈(虹色トロツキーだったかも)では、みなもと太郎ギャグがあった。
そういえば安彦良和は風雲児たちの帯の推薦文も書いていたような気がする。松吉伝も読んでいるのだろうが、それが天の血脈の前だったのか後だったのか。いずれにしても惜しい。
直訴ブルドーザー、訴状が天皇陛下に届いたのは112年後!安彦良和「王道の狗」人物伝4:田中正造 [歴史漫画]
「王道の狗」の田中正造がすごく良い。
子供の頃、小学館の「日本の歴史」で読んで知った偉人だ。
足尾銅山の被害を天皇に直接訴えようとするシーンは、なんとなく強烈に印象に残ってしまった。ちなみにこの本には金玉均も頭山満も出てこない。
王道の狗の田中正造は超パワー系で、ブルドーザーのようだ。
躊躇なく悪徳官吏をぶん殴り、牢屋に入れられても何処吹く風なキャラクターが鮮烈。
田中正造はこんな人だったのかあ。?
田中正造といえば、みなもと太郎の傑作、「松吉伝」でも触れられているシーンがインパクトあった。
松吉伝は、みなもと太郎の超人祖父について回想した漫画だ。
みなもと太郎は「眉唾」と控えめに語りつつも、リアリティある描写に「松吉すげえ工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工!」となってしまい、超オススメの一冊なのだが、その松吉が尊敬していた人物が田中正造だと語られているシーンがあるのだ。正造すげえ。
ところでこの引用したコマ、漫画の文法からすると、過去に書いた作品を切り貼りして回想に使っていることになるが、「風雲児たち」では見たことのないような気がするコマだ。出典はどこなのだろう。同人誌か?誰か教えて欲しい。
ちなみに、この時受理されなかった訴状は幸徳秋水が書いたものに正造が加筆し、実際に天皇陛下の元に渡されたのはなんと112年後の2013年のことだそうだ(wikiによる)。
財産はすべて鉱毒反対運動などに使い果たし、死去したときは無一文だったという(wiki)。
子供の頃、小学館の「日本の歴史」で読んで知った偉人だ。
足尾銅山の被害を天皇に直接訴えようとするシーンは、なんとなく強烈に印象に残ってしまった。ちなみにこの本には金玉均も頭山満も出てこない。
王道の狗の田中正造は超パワー系で、ブルドーザーのようだ。
躊躇なく悪徳官吏をぶん殴り、牢屋に入れられても何処吹く風なキャラクターが鮮烈。
田中正造はこんな人だったのかあ。?
田中正造といえば、みなもと太郎の傑作、「松吉伝」でも触れられているシーンがインパクトあった。
松吉伝は、みなもと太郎の超人祖父について回想した漫画だ。
みなもと太郎は「眉唾」と控えめに語りつつも、リアリティある描写に「松吉すげえ工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工!」となってしまい、超オススメの一冊なのだが、その松吉が尊敬していた人物が田中正造だと語られているシーンがあるのだ。正造すげえ。
ところでこの引用したコマ、漫画の文法からすると、過去に書いた作品を切り貼りして回想に使っていることになるが、「風雲児たち」では見たことのないような気がするコマだ。出典はどこなのだろう。同人誌か?誰か教えて欲しい。
ちなみに、この時受理されなかった訴状は幸徳秋水が書いたものに正造が加筆し、実際に天皇陛下の元に渡されたのはなんと112年後の2013年のことだそうだ(wikiによる)。
財産はすべて鉱毒反対運動などに使い果たし、死去したときは無一文だったという(wiki)。
王道の狗 文庫版 コミック 1-4巻セット (中公文庫 コミック版)
- 作者: 安彦 良和
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/12/20
- メディア: 文庫
暗殺の引き金はそのまま日清戦争の引き金となった。安彦良和「王道の狗」人物伝3金玉均(きんぎょくきん) [歴史漫画]
金玉均(きんぎょくきん)について、恥ずかしながらゴーマニズム を読むまで知らなかったのだが、「王道の狗」はまさに金玉均が中心人物となる漫画だった。
暗殺される前後の話は描写が似通っていて、さらに微妙な違いが面白い。
(「王道の狗」安彦良和/1999年)
(「大東亜論/アジア雄飛篇」小林よしのり/2018年)
王道の狗では頭山満の登場シーンはここだけ。
王道の狗で軽く流したシーンの詳細が大東亜論ではしっかり描写されている。
金玉均暗殺後のいざこざの描写は似通っている。大越成徳(おおこしなりのり)の顔がかなり違う。wikiを見た限りでは大東亜論の方が正確だ。これはインターネット黎明期と全盛の差なのだろうか。
大東亜論は絵物語要素が強いので、余白が少ない。
金玉均は朝鮮の近代化に尽力していた志士で、福沢諭吉などが援助し、国内でもネームバリューがあった。王道の狗の主人公は紆余曲折を経て、彼のボディーガードとなる。彼が暗殺されたことが日清戦争のきっかけになったらしい。そこは朝鮮じゃなくて中国なのね。よく考えるとよくわからん部分ではある。
王道の狗での金玉均は基本温和でアンニュイな人として描かれている。女癖が悪い描写があるが、勝海舟に「大石内蔵助」と評させている。ゴーマニズムの方は激情家としての描写が多く、主人公の頭山満が「大石内蔵助」になることを勧める描写がある。
暗殺される前後の話は描写が似通っていて、さらに微妙な違いが面白い。
(「王道の狗」安彦良和/1999年)
(「大東亜論/アジア雄飛篇」小林よしのり/2018年)
王道の狗では頭山満の登場シーンはここだけ。
王道の狗で軽く流したシーンの詳細が大東亜論ではしっかり描写されている。
金玉均暗殺後のいざこざの描写は似通っている。大越成徳(おおこしなりのり)の顔がかなり違う。wikiを見た限りでは大東亜論の方が正確だ。これはインターネット黎明期と全盛の差なのだろうか。
大東亜論は絵物語要素が強いので、余白が少ない。
金玉均は朝鮮の近代化に尽力していた志士で、福沢諭吉などが援助し、国内でもネームバリューがあった。王道の狗の主人公は紆余曲折を経て、彼のボディーガードとなる。彼が暗殺されたことが日清戦争のきっかけになったらしい。そこは朝鮮じゃなくて中国なのね。よく考えるとよくわからん部分ではある。
王道の狗での金玉均は基本温和でアンニュイな人として描かれている。女癖が悪い描写があるが、勝海舟に「大石内蔵助」と評させている。ゴーマニズムの方は激情家としての描写が多く、主人公の頭山満が「大石内蔵助」になることを勧める描写がある。
大東亜論 第三部 明治日本を作った男達: ゴーマニズム宣言SPECIAL
- 作者: 小林 よしのり
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/07/24
- メディア: 単行本
王道の狗 全4巻 完結セット (JETS COMICS) [コミックセット]
- 作者: 安彦 良和
- 出版社/メーカー:
- メディア: コミック
野見宿禰は弱かった!浮かび上がる真のラスボスとは?バキ休載中に読んでおくべき安彦良和の「蚤の王」 [歴史漫画]
安彦良和の「蚤の王」を買ってみた。
バキ道の新章のラスボス、野見宿禰(のみのすくね)についての漫画だ。
今から17年前の2001年にモーニング新マグナム増刊で連載されたものなんだそうだ。
武蔵編終了間際のバキで、知ってて当然みたいな感じで触れられていたが、全然知らなかったのでちょっと知識が欲しかった。他の読者は大丈夫なのだろうか。宮本武蔵だったら、大体の人が脅威を感じるだろうが、野見宿禰では「誰?」と、なりはしないだろうか。つうか、伝説の相撲取りだったら雷電為五郎の方がずっとメジャーなような気がするけどどうだろう。
さて、蚤の王を読んでみた感想だ。
なんと野見宿禰が弱い。
というかあまり強くない。
ルックスは安彦良和漫画定番の主人公顔で、普通にマッチョ。年齢がちょっと老けている。お相撲さん体型ではないのが特徴だ。インディアンっぽい。蹴りと肘を主体に戦っている。というとムエタイっぽいのを想像するだろうが、テコンドーっぽい。酔拳2のラスボスっぽいかもしれない。
そしてフィジカルは対戦相手の蹴速(けはや)の方が圧倒的なのだ。
とても宿禰が勝てそうな感じではない。
ちなみにウィキペディアにある画像では、宿禰方がフィジカルで圧倒している。
周囲の人がきを場外とするランバージャックデスマッチ形式で戦うのだが、それを利用して度々宿禰側に有利なように妨害が入る。やがて蹴速はこの戦いが自分の領土を奪うための、お上が仕組んだ罠だということに気づく。
「蚤の王」は、相撲の起源であり、殉死の廃絶を行なった野見宿禰と、それを許可した垂仁(すいにん)天皇の息子の病状が回復する史実を結びつけて、とりあえず一本の話にしてみました風な漫画だという感想を持った。だが、構成上重要人物であるはずの野見宿禰と垂仁天皇のいずれも激しく読者の感情を移入させるようなキャラに描写することに失敗しており、二人に復讐を誓う蹴速息子が大きく物語を動かす存在になっていて、なんだかなあというスッキリしない読後感だ。
今後、バキ道の二代目野見宿禰に絡んでくるかもしれないエピソードを紹介する。
1:野見宿禰は埴輪作りが趣味
生き埋めが嫌なら、埴輪を埋めればいいじゃない、と進言したのが野見宿禰だという。だから、粘土細工とか作るのが二代目も好きかもしれない。だが、あんなデカいなりで手先が器用だとは思えない。ちなみに蚤の王でも野見宿禰はあまり器用そうには描かれていない。
2:野見宿禰は勉強が得意
学問の神様といえば菅原道真であることは結構知られていると思う。その菅原道真は野見宿禰の子孫なんだそうだ。蘇我馬子だの入鹿だの、名前で遠回しにディスるのが日本の歴史の特徴だが、野見宿禰は「蚤」。これが埴輪騒動で土をいじる役職を与えられたことから「土師(はじ」」になった。これが「恥」っぽくて嫌だと桓武天皇の時代に「菅原」になったとらしいと安彦良和は蚤の王のあとがきで書いている。
これは二代目菅原道真ありそうな気がする。
フィジカルもあって勉強もできる。そして霊能力(たたり)もありそう。ピッコロを吸収した魔人ブウみたいなものか?
ところで相撲の起源と言われる戦いが、蹴りを主体に戦っていたって面白いね。いまだにKー1が人気あるのは、日本人に刻まれたDNAを奮い立たせるのだろうか。それがなぜ廃れてしまったのか。ウィキを見ると、空手が一般的なものになったのは昭和だという。それまでは柔術みたいな組み技が主流だしなあ。剣道って蹴りあったっけ。