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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは6 [シリーズ]

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強さのインフレを起こすたびにリアリティの崩壊を起こしつつも人気を爆発させてきたドラゴンボール。大人の経済的な事情により、延命を繰り返し続ける作品になってしまった。その初期構想とはどんなものだったのだろう。

神が作りしドラゴンボール。それを自らの欲望のためにしか使わない人間たちを滅ぼすために送り込まれた孫悟空。。。という初期構想(妄想)はなぜなくなったのだろうか。それはおそらく、成長した孫悟空を鳥山明が「もうちょっと見たかったんじゃ」ということなのではないだろうか。

鳥山明のキャラクターはギャグ漫画にしては珍しく年をとる。ドクタースランプでは則巻センベエが結婚し、子供まで出来た。ガッちゃんは二人になった。アラレちゃんは免許をとった。ドラゴンボールも同様で、天下一武道会のたびに悟空の身長が伸び、優勝した3度目の大会ではダイナミックに青年的な頭身となった。これは当時相当な衝撃があった。鳥山明の漫画のキャラクターといえば二頭身というお約束を覆した、一歩間違えれば作品生命を失いかねない展開だった。ピッコロ大魔王との戦いの時から、あたためていたアイディアなのだろう。編集側の反対もあったかもしれない。
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3回目の天下一武道会では結婚までしてしまう。そこまで来たら、生まれてくる子供の顔も見たいだろう。鳥山明も描きたかったに違いない。そうすると、もうちょっとだけ続く必要が出てくる。当然生まれてくる子供には尻尾が。となると、ルーツを探る話になるだろう。その時を見越して、ピッコロ大魔王編では出自に関する話をやらなかったのではないか。これが自分の推測(妄想)である。
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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは5 [シリーズ]

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強さのインフレを起こすたびにリアリティの崩壊を起こしつつも人気を爆発させてきたドラゴンボール。大人の経済的な事情により、延命を繰り返し続ける作品になってしまった。その初期構想とはどんなものだったのだろう。

ドラゴンボールの綺麗な最終回のチャンスは2回あった。
1度目は単行本2巻。最初のボール探しが終わり、仲間と別れ、悟空の新たなる旅立ちを描いている。「長い間ご愛読ありが… い、いえ!!まだ続きます!!」とナレーションしているが、この辺で終わっていればいわゆる「10週打ち切り」となる。連載が始まる前に鳥山明が決めた初期構想の1つだったのだろう。実に綺麗なラストだ。
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2回目の綺麗な最終回のチャンスは、いわゆる「もうちょっと続くんじゃ」の単行本17巻。亀仙人が綺麗に作品を総括している。
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実質的に、ここでドラゴンボールは描き切られていると自分は思っている。鳥山明もそう思っているのではないか。悟空の出自を説明するために少しだけ連載を延長するということなのだが、リアルタイムで読んでいた読者的にそのことについて説明が欲しいと思っていた人はどれぐらいいたのだろうか。もちろんネタバラシしてくれるなら聞きたいのだけど、犬が大統領やってる世界観という作品の構造上、スルーしても成立してしまう話なのだ。
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さて、ドラゴンボールの初期構想(推測)を改めてまとめてみる。
1:西遊記をベースにしたアドベンチャーロマン。
2:主人公はクンフー使い。実は神が遣わした人類破滅の最終兵器
3:ラスボスは神の未熟な人格。

ドラゴンボールを悪用する未熟な人格の人類を粛清するために悟空を送り込んだ神が、自らの未熟な人格による不始末の尻拭いを悟空にさせてしまうという矛盾、という内容になる。

いわゆるガッちゃん方式である「悟空が神の遣い」という裏設定はいつ頃なくなったのだろう。おそらく初期構想に「マジュニア」の展開はなかったであろうから、ピッコロ大魔王とのキングキャッスル戦の前に、世界観のネタバラシを持ってくるのが普通だ。

タイミング的には超神水をすっ飛ばし、いきなり神の神殿に行ってしまった方が話の流れとして自然なはずだ。そこで神と出会い、ピッコロ大魔王が自らの分身であるということの謝罪と、ドラゴンボールを作った理由の説明を受ける。世界観の一切の謎をなくし最終決戦。そして最終回。これが定石のはずだ。そして、そこで悟空が神の創りたもうた人類破壊兵器というネタバラシもあったはずである。これで「この一撃に全てを賭ける!」の大猿コマももっと活きる。
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しかし鳥山明はそれをせず、ピッコロ大魔王を倒したあとに神と悟空を対面させた。この構図だと、ピッコロの後にもう一戦必要になってくる。マジュニア編である。ピッコロ大魔王の後にマジュニアという構成を鳥山明がなぜ必要としたのかはよくわからない。ボール集め編は毎回不評なので、天下一武道会で締めたいということなのかもしれない。だから天津飯戦で悟空を勝たせなかったと考えると辻褄が合う。

話が若干それた。
悟空はいつ神の遣いではなく、サイヤ人になったのだろう。漫画史に残るセリフ「もうちょっとだけ続くんじゃ」だが、神の神殿で「神の遣い」にしておけば、もうちょっとだけ続く必要もなかったはずである。全ての伏線が回収され、綺麗な最終回になっていた。

一つ考えられるのは、ガッちゃんの踏襲では嫌だと作者が感じたのではないかということ。
もう一つ考えられるのは、悟空の身長にヒントがあると思う。

この話、もうちょっとだけ続く。

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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは4 [シリーズ]

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強さのインフレを起こすたびにリアリティの崩壊を起こしつつも人気を爆発させてきたドラゴンボール。大人の経済的な事情により、延命を繰り返し続ける作品になってしまった。その初期構想とはどんなものだったのだろう。

天下一武道会で人気の貯金を作り、ドラゴンボール集めという趣味の冒険漫画展開というローテーションを確立したドラゴンボール。第二回天下一武道会の頃にはリアルに一つの大きな事件が起こった。鳥山明がデザイナーとして参加したゲーム、「ドラゴンクエスト2悪霊の神々」のウルトラ大ヒットである。品薄のゲームを買い求める人が争奪戦を繰り広げ、大きな社会的な問題となった。

(動画は3の時のもの)

ドクタースランプ」で既にこれ以上ないというぐらいのヒットを飛ばしていた鳥山明は、「ゲーム」という意外なところからそれ以上のメガヒットを飛ばし、その名声を不動のものとしたのである。第二回天下一武道会の予選には、ドラクエ2のキャラクターもモブで出演し、連載当時自分の周囲でも話題になっていた。
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その一方、ドラクエの方にエネルギーを吸い取られたのか、当時のドラゴンボールの方のキャラクターデザインには疑問が残る。第二回天下一武道会のラスボス、天津飯である。当時、人気投票を競い合っていた他のジャンプ漫画のラスボスといえば、北斗の拳で言えば「ジャギ」「サウザー」「ラオウ」だったり、キン肉マンで言えば「ウォーズマン」「バッファローマン」「悪魔将軍」「ネプチューンマン」だったりしたわけで、外しの無い、読者が見て「うおおおおお!」と燃えるデザイン、絶対外しがなかったわけなのだが、天津飯はとてもその辺と張り合えるキャラクターでは無い。

亀仙流vs鶴仙流という構図は少年漫画らしい。しかしテーマが謎である。なぜ目が3つあったり、手が4本になったり、「いくわよー」とバレーボールを始めたりするのか。北斗の拳に目が3つあるキャラクターが出てきたら衝撃的だと思うが、動物が二本足で歩いて普通に喋るドラゴンボールの世界観では、驚くところなのか流すところなのか判別がつかない。
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自分はリアルタイムで読んでいて、チャオズがラスボスなのかと思っていた。当時「霊幻道士」という香港製ゾンビ映画が大ブームで、チャオズの元ネタはそこ。香港映画好きな鳥山明ならやりそうだと思っていたのだが。。。


デビュー戦でヤムチャの足を折るなどの残虐行為で敵役としてキャラを濃くしたものの、シリーズ完結を迎えるまでもなくあっさり改心してしまった天津飯。次章であるピッコロ大魔王編では前章のラスボス利権を得ることなく、あっさり戦力外。気功砲だの魔封波だの、あまり強さとは関係ない一発技屋としてその後のキャラを確立する。

そのピッコロ大魔王編であるが、作者の趣味の時間であるはずのドラゴンボール集めパートにもかかわらず、大好評を得る。クリリンが殺されるというシリアスな展開は相当なインパクトがあり、この先のシリーズが今までにない緊張感あるものだと読者に予感させた。
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ドラゴンボールを作った神の分身が、ラスボスとして主人公の前に現れたわけであるから、作品の構成からすれば最終章が始まったに等しい。登場キャラクターもドラゴンクエストを連想させるモンスタータイプ。これで読者が燃えないわけはない。
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ところが、ここで天津飯に続く謎キャラクターが一人登場。ヤジロベーである。タンバリンに殺されかけて復活してさらに強くなった悟空と同レベルスタートという、天津飯の価値をいきなり崩壊させてしまう新キャラだ。漫画なのにわざわざ「クリリンと同じ声」という設定にするあたり、悟空の新相棒になる展開が予想された。剣を操るあたりもドラクエチックで人気が出そう。のちのトランクスを思いださせる。なのにヤジロベーはピッコロの刺客を一蹴したデビュー戦の後、少年漫画キャラとしての見せ場はドラゴンボール最終回まで無かったのである。ピッコロ編が終わってみれば、悟空に超神水を飲ませるための運び屋としての役割しかなく、読んでいて消化不良だった。

ヤジロベーは作者が好きなキャラと公言するだけあって、単行本背表紙に二回も登場。読者のさらなる混乱を招く。


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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは3 [シリーズ]

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強さのインフレを起こすたびにリアリティの崩壊を起こしつつも人気を爆発させてきたドラゴンボール。大人の経済的な事情により、延命を繰り返し続ける作品になってしまった。当初の構想はドクタースランプの縮小再生産だったことは過去記事で述べた。

第一回のドラゴンボール集め完了を期に、テコ入れである天下一武道会編が始まる。これが当たり、以降天下一武道会でアンケートの貯金を作り、そのあとに本来作者が描きたかったドラゴンボール集めという構成を繰り返すことになる。ちなみに第二回ドラゴンボール集めの敵役はご存知、レッドリボン軍である。ミリタリー好きな鳥山明ならではの設定だが、幹部連中に魅力があるのはブルー将軍ぐらいという不思議なクオリティ。ドクタースランプのキャラクターを途中登場させるなどのテコ入れを必要とする結果に。やはり好きなものを描かせてはダメという、鳥嶋氏のアドバイスは的を得ている様だ。
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さて、当時読んでいて衝撃的だったのは、ドラゴンボールにおける修行が超重量を背負ってのトレーニングのみという点。亀仙人の修行プランを聞いた悟空が「技とか教えてくれよ」と文句を言っている。当時のカンフー漫画といえば、いかに修行を奇抜なものにするかというところに労力が注がれていた。スポ根を拒否し、ひたすらライトにクールに、ドライな演出をするのが鳥山明やあだち充の手法である。これがリアルタイムで読んでいてとても新鮮に映ったものである。バトル漫画がすでにありふれている少年ジャンプにおいて、差別化を図ることにも成功した。

そしてドラゴンボールの一大成功ギミックの一つであるスーパーサイヤ人の原型が3巻にしてすでに登場している。悟空、クリリン、亀仙人3人の男所帯と、しばらくむさ苦しい絵面が続くので、清涼剤として登場したキャラなのだろう。謎の家政婦、ランチさんである。くしゃみすれば黒髪の不思議少女が一転、金髪の怒れる戦士に。まるでスーパーサイヤ人である。
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スーパーサイヤ人はフリーザ編の途中から登場が予告され、それがある一定以上の戦闘力になった悟空のことなのかと思われた。しかしその登場は誰の目にもはっきりわかる形で実現した。読者の誰もがこの展開に熱狂した。これこそが俺たちの求めた展開だと。しかしこの瞬間、読者がランチさんを連想しては台無しである。もしランチさんが正レギュラー化してナメック星にいたら?今日のドラゴンボールの大ヒットはなかったのかもしれない。
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このことから、鳥山明がいつ頃からスーパーサイヤ人を構想していたのかが逆算できる。いわゆる「Z」となるサイヤ人編からランチさんは原作に一切登場しなくなっているからあからさまである。


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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは2 [シリーズ]

再アニメ化の大ヒットにより永遠の命を手にいれたとも言える「ドラゴンボール」。膨張し続ける宇宙の様に、永遠に強さがインフレしていくのだろうか。ところで鳥山明の初期構想とはどんなものだったのだろうか。大してインタビュー記事も読み込んでいない自分が妄想を膨らませて書いていこうと思う。

ドラゴンボールは、作者の前作「ドクタースランプ」の縮小再生西遊記バージョンだったということは前回書いた。ギャグ漫画というフォーマットを外したがために、持ち味であるギャグの切れ味も鈍くなった。これが作者のいう「この漫画は上品に攻めてみたい」というところだったのだろう。要するに売れるためになんでもやるのではなく、自分の好きなことをやりたがったのだ。
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鳥山明がこの漫画の見せ場として考えていたことの一つには間違いなく「尻尾が生えた悟空の正体」があったはずである。要所要所で悟空の正体に注意を促している。
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しかし大統領が犬だったり、大魚やウミガメが喋る世界観である。だから尻尾が生えている少年の異常さというのはボカされてしまう。そこに「大猿化」という強烈な意味付けのカウンターパンチを食らわせるのが鳥山明の初期構想だったと思われる。
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悟空の出自が惑星ベジータの戦闘民族サイヤ人だということは誰もが知っていることである。単行本では18巻で明らかになるが、そこは最初からのプラン通りだったのだろうか。悟空の兄が登場するまでに作品は冒険漫画からバトル漫画に路線変更がされている。最初から、バトルスーツに身を包んだ宇宙の地上げ屋がやってくる構想だったとは思いづらい。
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ヒントは作者の前作、ドクタースランプに感じられる。
ガッちゃんこと、則巻ガジラの存在である。ガッちゃんはアラレちゃんが太古の地球にタイムスリップして手に入れた卵から孵ったキャラクターである。作中最強との呼び声も高く、ゴム以外はなんでも食べてしまう。数年ごとに分裂して繁殖するという謎設定があるのだが、実はそれはガッちゃんの正体に関係していた。ガッちゃんの正体は、無限に増え続けて地球を食べ尽くすために神から遣わされた破壊兵器だったのである。
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このことから、悟空が地球を滅ぼすために送り込まれたキャラクターというのは初期から構想があったのだと思う。どこから?という部分が「ドラゴンボール」に繋がっていたのではなかろうか。つまりドラゴンボールを作った神様が、ロクなことを願わない人間に呆れ果て、悟空を送り込んだという構成だ。

作者が「引き」として採用した悟空の大猿化。
リアルタイムで読んでいて大変にインパクトがあったが、それでも前作の焼き直しだったわけである。これでは人気が出るはずがない。だからこそドラゴンボールは初期構想を諦め、格闘技漫画へと路線をシフトしていくのである。
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遥かなる旅路、「ドラゴンボール」その初期構想とは1 [シリーズ]

ドラゴンボールが新作アニメをきっかけに再び大人気だという。

自分といえば、亀仙人がフリーザの手下相手に無双しまくるあたりから、完全に興味を失ってしまった。ネットでは、「この鳥山明って脚本家、原作読んだことないんじゃね?」などとよく言われている。まあ、もともと作品に対して間違っても「自分の子供」などとは言わないドライな作家ではある。その辺は悟空のキャラクターに反映されているのかもしれない。
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死ぬと困る人が大勢いるという理由で、地獄の苦しみに耐えながら延命措置を受けている億万長者の老人の漫画があったが、ドラゴンボールもそれに似ている。動く人、動く金額があまりにも多い。続ければ続けるほど、強さのインフレが起こり、作品の矛盾は増すばかりである。しかしそのインフレ発生の瞬間こそが、ファンの求めるカタルシスでもあるのだ。ある意味ドラゴンボールという作品は、ベジータとフリーザですら得られなかった、不死身の命を与えられてしまったとも言える。

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「こんなはずでは無かった俺の人生」
さて、ドラゴンボールが始まった当初、作者はどの様な結末を考えていたのかを考えてみたい。ちなみに、自分は大全集などを買って読むぐらいのファンではないので、インタビュー記事の知識を網羅してはいない。初回からリアルタイムで読んでいて、当時思っていたことなどを思い返しながら描いてみようと思う。

ドラゴンボールが始まった当初、自分はまだ小学生だった。初期のドラゴンボールは人気投票で苦戦。「じゃあ人気出しますよ。」と言って始まったのが天下一武道会。シリアス格闘技漫画の多いジャンプで、軽くてドライな格闘技漫画として人気になる。鳥山明の初期構想が「西遊記」だったというのは、読者なら誰もが知っていることである。何しろ主人公の名前が「そん・ごくう」なのだから。当時、子供ながらに「なんだそりゃ」と違和感を感じたものである。西遊記といえば中国。中国といえばカンフー。当時、カンフー漫画はブルース・リーやジャッキーの影響で人気ジャンルだった。西遊記にカンフーのイメージは自然と結びつき、天下一武道会というテコ入れをスムーズに行うために役に立ったと言える。

しばらくドラゴンボールは天下一武道会で人気を一年稼いで、次の一年は好きな冒険ものを描くというローテーションになる。なぜ初期構想の冒険ものは人気が無かったのか。それは鳥山明の前作、ドクタースランプが原因であろう。鳥山明はドラゴンボールを始める以前に、その作品で「もうこれ以上はないだろう」というぐらいのヒットを飛ばしていた。ドクタースランプは天才発明家の作った宇宙最強人型ロボットの話である。その発明家はブルマよりも圧倒的に天才。そして人型ロボも圧倒的に強かった。初期の頃からフリーザ以上の強さを持っていたのだ。これではドラゴンボールが作者の初期構想で人気が出るはずがなかったのだ。
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(なぜか則巻千兵衛はブルマを天才と認めている。。。)





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四半世紀前に話題となった出版業界を揺るがす問題、再販制度とは?土田世紀の「編集王」16巻 [シリーズ]

シリーズでやっている漫画「編集王」の解説。
どうも最高傑作である明治編以降はテンションが上がらないので、このまま終わろうと思う。

ところでAmazonを見ていたら、秋田書店の「チャンピオン」系列誌の電子書籍が軒並み99円!安い!バキと弱虫ペダルしか読んでないけど、地方のコンビニではなかなか立ち読みする機会も少ないので、100円なら買ってもいいかなあと思った。気になって、「サンデー」や「マガジン」もチェックしたが、それらはおそらく本屋で買うのと変わらない値段。さすがチャンピオンは攻めている。

そういえば「編集王」の最終章は「再販制度」を取り上げている。
近年だと児童ポルノ法が漫画業界を揺るがす大きな危機として話題になったが、再販制度も大御所たちが激しいテンションで世論に働きかけて話題になった。
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再販制度は大まかにいえば、出版社の決めた価格を維持して流通する法律らしい。
今は電化製品の広告など、価格が表示されていなくて不便だ。現在の状態になる過程で「オープン価格」という表記をよく見かけたことがあると思うが、その前は「メーカー希望小売価格」として、商品の価格が表示されていた。しかし、市場に自由に公正に競争させて経済を活性化させるために価格は販売店が決めるべきという理由から、メーカーの広告からは価格の表示が禁止された。
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(画像は「課長島耕作」8巻)

課長島耕作」で、メーカー希望小売価格を守ろうとしない小売店に圧力をかけて、独占禁止法違反だとして大騒ぎになる話があった。例えば書店が「ワンピース」を大量に仕入れる代わりに一冊当たりの仕入値を安くし、一冊200円で売りさばくということができないのだ。そういえば本のカバーには価格が印刷されている。今ちょうど手元にある「サッポロポテトバーベQあじ」やコーラのペットボトルには価格なんて印刷されてないのに。
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(画像は「課長島耕作」8巻)

この制度の維持が正しいのかはよく分からない。
「編集王」での意見は一枚岩過ぎて、ちょっと圧力感がある。異論を唱えた作家は追放されるんじゃないかというぐらいの重苦しい業界の雰囲気を感じる。結局のところ、チャンピオンはディスカウントして売られている。電子書籍といえば「セール」だ。コロッコロ価格が変わる。電子書籍以前から本屋もどんどん少なくなっている。
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電子書籍を嫌う人の本質的な理由は「俺が生まれた時から無い」以外に無い。電子書籍ネイティブは増える一方だ。もはや再販制度は維持されたまま、リアル書店とともに形骸化していくのかもしれない。もしくはリアル書店生き残りの最後のカンフル剤が、再販制度撤廃だったりするのかもしれない。
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編集王(16) (ビッグコミックス)

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  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1990/05/23
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週刊少年チャンピオン2017年07号 [雑誌]

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  • 出版社/メーカー: 秋田書店
  • 発売日: 2017/01/12
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編集王に俺はなる!ワンピースよりも3年早かった土田世紀の「編集王」8 [シリーズ]

編集王第9エピソードは最高傑作との呼び声も高い明治編。

セクハラ気質で仕事はビジネスライクの明治が異動してくる。
あまり人の気持ちなど考えないので人望は無いが、きっちり成果を上げるので上司受けがいい。仕事の取り組み方が相反する先輩編集者に「お前みたいな奴から真っ先に出世するんだろうな!」と捨て台詞を吐かれ、「当たり前じゃねえか。」と内心毒づくコマは名シーン。
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エロ漫画のプロデュースを思いついたことから少しづつ明治の心境に変化が起きてくる。やり方は相変わらずエゲツないのだが、寝食を忘れ仕事に没頭。スタートさせた連載は編集部の機能がマヒするほどの抗議が殺到。雑誌は創刊以来初の完売という快挙を達成する。
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(↑抗議が盛り上がりすぎて苦悩する編集長。この頃は不況知らずの出版業界だったそうです)
田嶋陽子をモデルにした女性タレントが編集部に抗議に乗り込んだことから、政治問題にまでなりかけるが、社長はギリギリまで「エロ」を引っ張る。この辺のしたたかさの表現も好きだ。いよいよヤバいとなったことから、明治の漫画はエロを封印され、没落が始まる。
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しかし明治はキッパリと「エロ以外をやる気は無いぜ」と気を吐く。動機はただ売れるためだったが、ここにきて損得なく、ただエロを追求したいという自分の本性に明治は気づくのだった。
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そしてここから物語は明治の原体験を追う。
体格もよく、勉強も出来たが、自己評価が低かった明治はいじめにあっていた。友達は自身の空想が生み出した宇宙人だけ。そんな明治をただ一人、人間扱いしてくれたクラスメイトの女の子がいた。そして一人の秀才男子高校生との出会いによって、明治の人格を大きく変える出来事が起こる。
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ここまで凄まじくはないが、少年期の明治の思考には自分もかぶる部分がある。
「きっと人間がひと回り大きく変わろうとする時、あんたはいつもみんなの分の汚れ役を引き受けていたんだよな。」というセリフは感動的だ。

作者は一体どんな着地地点を最初に思い描いていたのか。おそらく初期の構想と違った結末になったのではなかろうか。明治の顔もだいぶ変わって主役の顔になっている。


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編集王に俺はなる!ワンピースよりも3年早かった土田世紀の「編集王」7 [シリーズ]

編集王、第8エピソードは、いよいよ主人公が「担当」となる。
作家は第1エピソードに出てきた大物漫画家。
作家本人には仕事に対する意欲は無く、作品も現場に任せっきりでクオリティも低いのだが、過去のネームバリューのおかげで一定の収益が見込めることから出版社は彼を使い続けていた。

「誰が困るのか?」という大人の話。
それをぶち壊したくなるのが主人公。
全てをぶちまけ、また昔のような名作を作ろうと作家に持ちかける。

自らどん底にいることを認めた作家は各漫画雑誌の編集長に土下座して謝罪。
売れない時代にひたむきに下積みをしていた作家の過去を思い出した編集長たちは謝罪を受け入れる。
しかし再出発の祝杯で作家が悪酔いして暴行、逮捕。世間に大ニュースとして広まってしまい作品は全て打ち切りに。作家は重度のアルコール中毒だったのだ。

編集王、屈指の名エピソードの一つである。
作家のマンボ好塚は、ベテランで「塚」なので、手塚治虫がモデルなのかと思っていたので、業界ではこういう評価なのか?と長年疑問だったのだが、ウィキによると武闘派の中の武闘派として知られる梶原一騎など、複数の漫画家を合成して作られているキャラクターだそうだ。ちなみに編集王の作者もアル中で死亡していることから、実体験も盛り込まれているのかもしれない。
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保釈されて出てきた好塚が、スタッフによって荒らされた職場をみてショック受けるコマは、江川達也の職場として紹介する書き込みなどもあるが、言い得て妙である。
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「どのスイッチを押せば読者がついてくるか俺は知り尽くしているんだぞ」というセリフは、本人が言いそうだという意味で江川達也的である。江川達也論はまた別にやりたいが、典型的な大作家の転落エピソードなのかもしれない。

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(好きなコマ1:「そんな事言って楽しそうじゃないですか。」「まあな。少なくとも今は酒よりな」

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(好きなコマ2:「泣き言を言う権利はあなたにないでしょう。アルコールに依存するやり方を選んだのはあんたなんだから。あんたと同じぐらいデリケートで、それでもアルコールに依存しないで生きている人間だってゴマンと居るんだから。」

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(好きなコマ3:気がはや過ぎるが、玉吉の四十九日にはお参りしたい)


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編集王に俺はなる!ワンピースよりも3年早かった土田世紀の「編集王」6 [シリーズ]

編集王第七エピソードは新人の新連載立ち上げエピソード。
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漫画嫌いの新人編集者、本占地。持ち込み当番で担当した新人が可愛い女の子だったことで戸惑いつつ、彼女の光るセンスに仕事へのやりがいを持ち始める。持ち込み作品は悪役編集者や編集長も絶賛。準入選を果たし、二人は連載用作品の執筆を始める。ところが編集長は持ち込んだネームをロクに読みもせず、用意しておいたアイディアを勧める。実績のない新人コンビと、雑誌の売り上げを二倍にした辣腕編集長とどちらが売れる漫画を分かっているか?という理屈だ。なんとか前向きに受け止めようとする二人。しかしそれは雑誌の売り上げを上げるために新人を使い捨てにする編集長のいつもの手だった。。。という話。
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進撃の巨人」を少年ジャンプがスルーしたことで、雑誌の批判のタネにする人を、まとめサイトのコメントなどでたまに見かける。別冊マガジンが出した利益をそのままそっくりいただけたのだとしたら、確かに大きな損失だろう。しかし、ジャンプ編集部にしたって売れる漫画が確実にわかるなどとは思ってないことは、ジャンプが「10週打ち切り」と言う言葉を生み出したことからも証明されている。ジャンプ版編集王とも言うべき「バクマン。」でもそんなセリフがあった。
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最近、Kindle読み放題の「マンガで食えない人の壁 -プロがプロたる所以編」で、敏腕編集者として知られる佐渡島庸平が、モーニング連載中の株取引漫画「インベスターZ」を最初にジャンプに持ち込んだ話をしていてぶっ飛んだ。「ドラゴン桜」「砂の栄冠」などの大ヒットメーカーの三田紀房の作品である。それを雑誌のカラーに合ってないと蹴っ飛ばすジャンプも尋常ではない。作品の面白い面白くないは主観的なものである。発言権を強めるためには売れたと言う実績が何よりものを言うはずだが、ジャンプはそんな要素も超越して雑誌のカラーに収まることが何よりも大事なのだ。などと書くと何か尊大で偉ぶったニュアンスになってしまうが、よくいえばこれは「自分たちが面白いと思えるものはこうだ!」と言う確固たる信念、編集方針である。思いっきり主観的な考え方なのだ。誰もが主観を貫きたいと思っている。しかし頂点に立てるものは一人。どこかで結果と折り合いをつけ、バランスをとってしまうものだ。主観を貫いて業界1位。なんとも羨ましい話ではないか。
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(好きなシーン。この後、主人公が「痛いとこ突きやがる」とニヤリと笑う。)

今回の編集王のエピソードでの編集長のやり方がどうかと言う感想は特にない。作品をどこで発表したいかと言うのも、ある種の作家の打算だからだ。時代が変わったというのもある。昔、作品がアニメ化された漫画家が、「ジャンプは俺の才能を見抜けなかった」とコメントしていたのを思い出す。その漫画家は今はあまり見かけない。アニメ化された作品のタイトルを聞いてもピンとくる人も少ないだろう。その結果に、ジャンプも何もコメントを持たないはずだ。忙しいだろうから。
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(このエピソードで同作者のヒット作「俺節」のキャラクターがカメオ出演。昔、友達と本屋に行ってこの漫画を買った時、どんなの?と聞かれて「演歌漫画だよ。」と答えたら「お前スゲえな」と感心されたことを思い出す。」
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マンガで食えない人の壁 -プロがプロたる所以編-

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